業種別
医療法人会計基準

第5回:医療法人会計基準の特徴および個別論点(その3)

2014.11.12
ヘルスケアセクター
公認会計士 藤本 庸介

本シリーズの第3回、第4回では個別論点として、注記表、純資産、収益費用の分類、圧縮記帳、税効果会計、金融商品会計、退職給付会計について解説してきました。
本稿では、リース会計、棚卸資産の評価方法、減損会計、関連当事者の注記について解説します。

1. リース会計

(1)リース取引とは

リース取引とは、ある物件を所有する貸手(例:リース会社)が、当該物件の借手(例:病院)に対し、リース期間にわたり、これを使用収益する権利を与え、借手はリース料を貸手に支払う取引をいいます。
リース取引は、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類され、また、ファイナンス・リース取引のうち、所有権が借手に移転するか否かにより、所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引に分類されます。

(2)リース取引の会計処理

医療法人会計基準(本会計基準)において、ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うことが求められていますが、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、一定の要件を満たす場合には賃貸借処理を行うことができるとされています。

(3)賃貸借処理を行うことができる所有権移転外ファイナンス・リース取引

一契約におけるリース料総額が300万円未満の取引のほか、リース取引開始日が本会計基準適用前または一定の法人の場合は、賃貸借処理を行うことができるとされています。なお、下記の3種の取り扱いにより、賃貸借処理をしたものは、貸借対照表に関する注記の1項目としてリース料総額と未経過リース料の残高を記載することとされています。

  1. 一契約におけるリース料総額が、300万円未満の所有権移転外ファイナンス・リース取引
  2. リース取引開始日が、本会計基準の適用前の会計年度である所有権移転外ファイナンス・リース取引
  3. リース取引開始日の前々事業年度末日の負債総額が200億円未満で、かつ(リース取引開始日が属する会計年度において)社会医療法人でない場合の所有権移転外ファイナンス・リース取引

2. 棚卸資産の評価方法

本会計基準おいて、棚卸資産については、取得価額をもって貸借対照表価額とし、時価が取得価額よりも下落した場合には、時価をもって貸借対照表価額とするとされています。
また、棚卸資産の評価方法は、先入先出法、移動平均法、総平均法の中から選択適用することを原則としていますが、最終仕入原価法も期間損益の計算上著しい弊害がない場合には、用いることができるとされています。

3. 減損会計

(1)減損会計とは

固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態をいい、減損処理とは、そのような場合に一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理をいいます。

(2)減損会計の適用方法

本会計基準では、収益を上げることが第一義的な目的でない非営利組織体に減損会計を適用することは理論的ではないとし、医療法人には減損会計を適用しないとされています。ただし、第2 貸借対照表 4 資産の貸借対照表価額に記載されているとおり、資産の時価が著しく下落したときは、回復の見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額としなければなりません。
なお、使用価値が時価を超える場合には、取得価額から減価償却累計額を控除した価額を超えない限りにおいて使用価値をもって貸借対照表価額とすることが認められます。

4. 関連当事者注記について

(1)関連当事者とは

法人の運営に当たり、当該法人と密接に関係する者との取引は、他の者との取引と異なる取引条件などにより、財務諸表の数値に影響を与え、財務諸表の利用者の判断を誤らせるおそれがあります。そこで、本会計基準では、補足情報として、関連当事者の範囲を明確にするとともに、取引内容について注記することが適当とされています。ただし、事務作業の困難性を考慮して、より公益性の高い類型である社会医療法人に限定して適用されます。
関連当事者との取引については、次に掲げる事項を原則として関連当事者ごとに注記しなければならないとされており、また、関連当事者とは次の者をいいます。

  • 関係法人
  • 当該医療法人と同一の関係法人をもつ法人
  • 当該医療法人の役員及びその近親者(配偶者及び二親等内の親族を言う。以下同じ。)
  • 当該医療法人の役員及びその近親者が支配している法人

(2)注記する取引の範囲

関連当事者が法人の場合には、以下の取引が該当します。

  • 事業収益に係る取引は、本来業務事業収益、附帯業務事業収益及び収益業務事業収益の合計額の10%超の取引
  • 事業費用に係る取引は、本来業務事業費用、附帯業務事業費用及び収益業務事業費用の合計額の10%超の取引
  • 事業外収益又は事業外費用に係る取引は、それぞれの合計額の10%超の取引
  • 特別利益又は特別損失に係る取引は、1,000万円超の取引
  • 資産又は負債については、総資産の1%超の残高
  • 資金貸借取引、有形固定資産や有価証券の購入・売却取引等については、取引発生総額が総資産の1%超の取引
  • 事業の譲受又は譲渡の場合には、資産又は負債の総額のいずれか大きい額が総資産の1%超の取引

なお、関連当事者が個人の場合には、損益計算書項目および貸借対照表項目のいずれに係る取引についても、年間1,000万円超の取引が対象となります。

(3)注記内容

関連当事者との取引については、次に掲げる事項を原則として関連当事者ごとに注記しなければならないとされています。

  • 当該関連当事者が法人の場合には、その名称、所在地、直近の会計期末における資産総額及び事業の内容。なお、当該関連当事者が会社の場合には、当該関連当事者の議決権に対する当該医療法人の所有割合。
  • 当該関連当事者が個人の場合には、その氏名及び職業
  • 当該医療法人と関連当事者との関係
  • 取引の内容
  • 取引の種類別の取引金額
  • 取引条件及び取引条件の決定方針
  • 取引により発生した債権債務に係る主な科目別の期末残高
  • 取引条件の変更があった場合には、その旨、変更の内容及び当該変更が計算書類に与えている影響の内容

(4)注記を要しない関連当事者との間の取引

関連当事者との間の取引のうち、次に定める取引は、注記を要しないとされています。

  • 一般競争入札による取引並びに預金利息及び配当金の受取りその他取引の性格からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引
  • 役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払い